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2026年8月3日月曜日

『イン・ザ・メガチャーチ』を読んだよ

今年の本屋大賞『イン・ザ・メガチャーチ』を読みました。
[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

イン・ザ・メガチャーチ [ 朝井リョウ ]
価格:2,200円(税込、送料無料) (2026/8/3時点)



さすが本屋大賞というか、面白いのはもちろんのこと、ものすごく現代を切り取った本でびっくりしました。
この本にコロナ後の世界が詰まっていて、100年後くらいに「当時の社会の雰囲気はこんな感じでした」という資料にしてもいいんじゃないかとすら思いますわ。

内容は主に推し活とファンダム経済の話で
この本が扱う推し活は、人やキャラクターを推す話だけでなく、特定の思想を支持することも含んでいるんだろうなと思わされます。
日本が危ない!も一種の推し活であるならば、SDGsもベクトルが違う一種の推し活なのだと。
何かに影響されて、価値観や生活が変わり、それに触れると幸せだと感じるなら広い意味で推し活、
そして何かに影響されて、価値観や生活が変わり、”推し”のフィルターを通して、特定の角度から世界を見ること…つまり「視野を狭める」ことが広い意味で推し活であると。

そして推し活にはコミュニティが付随している。
なので、何を推すかは、自分がどこのコミュニティに所属するかを選ぶこととわりと近かったりする。
ただこれが推し活の厄介なところだと思うんですよ。
ファンダムに取り込まれるうちに、本当に推したくて推しているのか、コミュニティから取り残されたくなくてやっているのか、わからなくなってしまう。
同じ意見の人に囲まれて、視野はどんどん狭くなっていく。

推し活にハマるのは愚かなことなのでしょうか?
少なくとも推してない側から見ると「そんなもの」に夢中になるのが信じられない。という価値観になってしまうのですが
じゃあそうやって安全圏から「そんなものに夢中になってあほらしいw」と冷笑していれば何かを得られるのか?というと、全くそんなことはなく。
作中ではむしろ視野が狭いほうが幸せ、のような主張がされている気がしました。

推し活にコミュニティが付随しているなら、何も推していない人というのはどこのコミュニティにも所属できていない、ということになってしまうわけで。
「視野が広い」人は、拠り所が無く大海原にいるような孤独感を感じている。

作中では、推し活を仕掛ける側の視点も登場するわけですが
明らかに有能で、推し活をしている人を見下し、搾取するためのプランを考える人に主人公は心の中で問いかけるんですよ
「あなたには雑談できる相手はいますか?」
と。

作中で繰り返されるのが
これからの人生に還って来るのは、これまでやってきたことよりもやってこなかったことのほうだ。
という言葉で
仕事に一生懸命取り組んだことではなく、逆に、仕事にリソースを割いた結果疎かになった私生活の部分が、人生の後半で牙を向いてくるぞと。
おお恐ろしい恐ろしい。
今までコミュニティの構築をサボっていた人が突然どこかのコミュニティに入るのは至難の業。そんな時に優しく両手を広げて受け入れてくれるコミュニティ、それは、だいたいヤベー思想なんですよね。
どうすりゃ良いんでしょうね。詰んでる。

とはいえ、推し活をすれば安泰なのかというと全くそんなことはなく
ファンダムの中の無数の誰かよりも凄いことをして、SNSに張り付いていないとコミュニティの中で固体認知されないんですよ。
無理のない範囲でそれができて、本人が幸せなら良いんでしょうけれど
身体的時間的金銭的負担を強いて、それが達成できないと「それでもファンなのか」という言葉が出てくるのはちょこちょこ見かけるかなぁ。
あと同じ思想を持っていないと弾かれるから、
コミュニティに残り続けるために、思想も支配される事があるかもしれない。
視野が狭いと、一時的に連帯感や幸福感があるけれど、熱量をどんどん上げていかないと取り残されてしまう。現状維持は許されない。

じゃあどうすりゃいいんですかと。
過度に推しにはまらず、雑談できる相手を見つけるには、友達を見つけるには。
一体どうすればいいんですかと思うわけですが
答えは出ないわけですよね。
正直、ご近所と付き合うのもある意味ギャンブルだと思いますし。

誰と、あるいは何と付き合うにしても、自分自身の思考と判断を手放さず
ほどほどの距離感を保ちながら付き合うのがベストなのでしょうけれど
それで孤独感が埋まるのか?というと多分埋まらない気がして
いやほんと、詰んでますよね、人間関係ムズカシイ。

この本がなぜ「メガチャーチ」なのかというと、日本の推し活ビジネスは、アメリカのチャーチマーケティング…教会に人を呼び込むためのマーケティングになぞらえているからで
自認無宗教の日本では、推しこそが「神」であると。

個人的には、推し活をしつつも、頭の何処かには「チャーチマーケティングに踊らされているんだろうなぁ」という気持ちを持っていたいところですが
一方で、完全燃焼できるくらい何かにはまれる人を見て、幸せそうだなぁ、羨ましいなぁ、とも思いながら
これからも一人部屋の中、インスタント味噌汁を溶かす日々を送るんだろうな、きっと。
まあアマノフーズの味噌汁は美味しいので、私はそれだけでちょっと幸せ感じられますけどね。
アマノフーズはぼっちを救う…ってこと?

2025年12月19日金曜日

『科学的に証明されたすごい習慣大百科』でダイエットを……

今読んでる本、『科学的に証明されたすごい習慣大百科』

私、リングリットアドベンチャーが発売されて以降今まで、体調を崩した時と葬式の時以外週2回筋トレをやっているのですが
これが本当に嫌で嫌で仕方ないんですよ。
腰痛と坐骨神経痛に明らかな改善が見られるので渋々続けているものの
答えがわかっているのに問うてしまう。なんでこんな辛い事しなきゃいけないのかと。腰痛のためだけど。

私が今できる対策は”心を無にする”一択なのですが、この本に何か良いこと書いてるといいなと思って手にとってみました。

こちらの本では、カテゴリを仕事、勉強、健康・ダイエット、コミュニケーション、メンタル、生活に分けて、各章20ちょっとくらいの習慣が掲載されています。
ちゃんと、どこの機関がどういう実験をして結果が出たものだ。というエビデンス付き。
まあ偉い大学が研究した結果が後年で覆ることもあるので、とりあえず今のところは科学的に検証されて効果があると言われている習慣、という感じでしょうか。

一応ダイエット部門で気になったものをピックアップすると、
「脳内食事」をすると食欲抑制になる。というものがありましてね。
これ読んだ瞬間「ヤダー!」と叫びましたよ。
脳内食事!虚無!

というか、これってどうなんでしょう?いわゆる飯テロの画像や動画を見ると、食欲が刺激されそうな気がするので、美味しそうなご飯の想像も危険な気がするのですが…
眼の前に美味しそうなご飯が並ぶところは省略するとか、口の中の水分が奪われそうなカロリーメイトをもそもそ食べる場面を想像するとか、
そういう工夫要りますかね?

もうひとつが映画を観る。
なんでも、映画を観たときの心拍数の上昇は、軽い有酸素運動と同じだとか。
つまり映画は運動!

これね、ネットでインド映画にはまって体重が落ちたと公表している人を一人や二人ではなく見たことあるので、人によってはそうなんだろうな。とちょっと納得できるんですよね。
しかし?私はどうですか?『RRR』観て痩せました?3時間も”軽い有酸素運動”してたらしいですよ?なんなら『バーフバリ』はオールナイト上映に出かけて6時間ぶっ続けで観ましたけど

まあこの手の話は、私のポリシーとしては”効果があると信じる事が重要”なので
ちょっとこれから映画観るときは「有酸素運動してる!」と思いながら観るように心がけます。

嫌な筋トレを嫌じゃなくする習慣は無かった……無念無想、無念無想。

2025年11月27日木曜日

おじさんが対人関係で苦労しながら喫茶店に通って美味しいもの食べるだけ『喫茶おじさん』

タイトルとポップな表紙に惹かれて読んだ本。
喫茶店版『孤独のグルメ』かとおもいきや、グルメレポートの裏に57歳無職の人生の苦労がひしひしと書かれていてちょっとつらくなるのがこちらの本
『喫茶おじさん』でした。


主人公の松尾純一郎は57歳、無職、離婚の危機。
家の近所の喫茶店で浅い知識をひけらかし、それに対して気分を害した店員に陰口を叩かれたことをきっかけに、喫茶店巡りを趣味にする。
それから1年間、純一郎を取り巻く様々な人と会いながら話は進んでいくのですが
会う人に必ずこう言われるんです。「あなたは何もわかっていない。」と。

一体何が「わかっていない」と言うのか、気がつく人はすぐ気がつくのかもしれませんが、私はしばらく何を言われているのか分かりませんでした。
書評では、純一郎にいらっとする、との意見があるようですが、私はこのおじさん、めちゃくちゃ性格良いなと思いました。
「何もわかっていない」って、他人にかける言葉としては、かなりきつい悪口の部類だと思うんですが、純一郎はそう言われても怒らないんですよね。
言われてモヤモヤとした気持ちを抱えることがあっても、喫茶店巡りでおいしいコーヒーやパン、スイーツなどを食べて流して、後に引きずらない。
誰かに当たるでもなく、いつまでもくよくよしているわけでもなく、非常にメンタルが安定しているように見受けられます。

半分くらい読んだところでようやく、何がわかっていなかったのか、1人の口から語られるのですが、トータルで「俺の私の苦労を純一郎は理解しない」という指摘なんじゃないかと思うわけですよ。
まあ純一郎、57歳無職離婚の危機と書いたものの、元々一部上場企業に勤めていたイケメンで早期退職で5000万円ももらい、埼玉に土地付き家有り、お金と健康を気にせず喫茶店はしご三昧なので確かに恵まれてはいるんですが。
それでも純一郎に「何もわかっていない」と言葉をぶつけた人たちは、純一郎のことを何かわかっていたのだろうか?という怒りが、私は湧いてくるわけですよ。
特に純一郎の妻に対して。アンタがそれを言うのはおかしくない?と思うんですけどね。

この本に登場する人の誰が最も良い人生なのか、そこは議論の余地があるところだと思います。
でもそこに議論の余地があるってことは、良い人生って答えが一つとは限らないから。
完璧な人生を送っている人は居ない。誰しも何か問題があり、不満があるのに
純一郎だけが「わかってない」をぶつけられるのは結構理不尽に感じますし
そう言われ続けてもなお、「誰も自分の事をわかってくれない」と腐るのではなく喫茶店で美味しいものを食べて幸せを噛み締める純一郎はやはり性格が良いなと思うわけですよ。

かつて「悩みなんてないんでしょう?」と言われた事を思い出しますね。
この文章の中に、お前の人生は楽、という決めつけ、それに比べてこっちの人生は大変、という不幸自慢、それでもやりくりしてるんだぜというタフ自慢、こっちの事情を考えようともしない共感性の低さなど諸々が詰まってるんですよね。
「あなたは何もわかっていない」も、とても似た言葉だなぁと思うわけです。

物語のラストは賛否ありそうな終わり方ですが
どちらかというと私も純一郎のような老後を過ごしたい気がするので、個人的には良かったねと思いますね。

2025年9月16日火曜日

夏フェア本をガチャで読んでみよう

デイリーポータルZで新潮文庫の100冊全部読む企画(※ただし未達)があり、私もやってみようかな。などと思ったわけです。
しかしこの100冊、固定メンバーも多いようですがラインナップが毎年変わるんですよね。
いわゆる夏休みに本読んで読書感想文を書くやつが元ネタっぽいので他の出版社もやっているし。
それも6月末からやっている!完全に出遅れている!

というわけで、100冊は無理だけど5冊くらいは読んでみようと思ったのですが
読みたい本ではなく、完全にランダムで読む本を決めようと思います。

対象は夏フェア開催中の3社(新潮・集英社・角川)のおすすめ本
「怖い」に分類されている本は除く既読本も除く。
で、Excelに一覧のリストを作ってランダム関数を使って5冊をピックアップ。

選ばれたのは…

1.遠野物語 / 柳田国男(+おまけで100分de名著 遠野物語 / 石井 正己)
2.ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー / ブレイディみかこ 
3.春琴抄 / 谷崎潤一郎
4.桐島、部活やめるってよ / 朝井リョウ
5.ようこそ地球さん / 星新一

たのしぃー。
こんな企画でもなければ谷崎潤一郎は絶対選ばなかったと思います。
福袋もそうですけど、私ランダムわりと好きなのかもなぁ…

なお、5冊読んでみて一番面白いというか発狂したのが「桐島、部活やめるってよ 」でして。
ネタバレになるので古の白文字にしますが
桐島が一切登場しないなんて思わないじゃないですか!
なんで部活辞めたんだよ桐島ぁ!理由言わずに終わらないでよぉ!
いや分かりますよ、私だって、あえて触れない事で他人の事情の分からなさを表現してる事くらいわかりますよ。 何でもかんでも詳らかにすれば良いと思ってこのミステリ小説脳めが!とか、思われるの分かりますよ。 物語のつじつまがぴったり合うのはエンタメなんだよねぇ…わかるわかるぅ…

という感じですね。
一方で谷崎潤一郎はやっぱり合わなかったので二度と読まないんじゃないかと思います。
パワハラ、ダメ、ゼッタイ。

いずれ100冊全部読みたいと思いますが、面白かったのでまたガチャ読書はやるかもしれません。

2025年2月17日月曜日

映画になるらしい『盤上の向日葵』を読んだよ

将棋のプロ棋士になるために所属が必要な奨励会、入会に結構なお金が必要だったと記憶しており
貧乏な家に将棋の天才が産まれたらどうなってしまうんだ…?と思った記憶があります。
改めて見てみると、入会金は10万円と大きいものの年会費は12万。
1万円/月と考えると、習い事のお値段ポジションでしょうか。
ただ月に何度か関東または関西の将棋会館に出向き、将棋を指す必要があり
地方出身者は会費に加えて将棋会館に行くまでの交通費、宿泊費などが必要になるので
金銭的・時間的負担は不平等だなと思っております。

そんな私がぼんやり考えていた「もしも」が登場するのが
10月に映画が公開される「盤上の向日葵」です。

2019年にNHKでドラマ化もしていたようですが、その頃まだ観る将でも無かったので、つい先日調べて知りました。

まだ将棋小説をすべて読んだわけではないですが、今のところ面白さに関しては将棋小説随一ですね。
最初に犯人が示される倒叙形式で、刑事が追い詰めたのは奨励会を経ずプロになった異例の棋士、上条桂介。
その少し前に発見された白骨死体は、世界に7組しかない高級将棋駒「初代菊水月」を握っていた。

どうやって罪を犯したのか、という点だけでなく、一体誰の死体なのかが分からない。
一方では遺留品「初代菊水月」を追い、もう一方では上条桂介の人生を追いかけながら謎を解き明かしていく流れになっています。

面白いものの個人的には共感できない部分もあり
本を読みながら「上条、そんな男やめなよ」と何度思った事か。
私視点だと、上条桂介を取り巻く人間は3人おり、
ろくでもない父の庸一、ろくでもない真剣師の東明、立派な恩師唐沢なのですが
ろくでもない男が好き…今の時代こう言うと語弊がありますが、恋愛的な意味ではなく、傲慢さや強烈な自我、仄暗い才能のほうに上条は魅力を感じるか安心感を感じてしまい……

…やっぱり平たく言うとろくでもない男が好きなんだね。って言うか……

引き返せるポイントがたくさんあるのに、私視点では全く魅力が分からない人にふらふらついていく話を読んでは、リスク回避の概念は無いのかと首をかしげ、「そんな男やめなよ上条」を繰り返しておりました。

なぜそっち側に行ってしまうのか。
プロ棋士の勝負じゃダメだったのかい?
この設定がラストに説得力を与えているとも言えますが。

で、小説で私が魅力を感じられないろくでもない男、NHKのドラマで演じたのが竹中直人で。
これは映像だと魅力的な人物なっちゃうんだろうな。と思うキャストですね。
10月から上映される映画のほうは渡辺謙で
これまた魅力的な人物になっちゃいそうな予感がしております。
映画を見れば、私も上条の気持ちが少し理解できるでしょうか。
「まあ渡辺謙ならついていくなぁ」とか、思えるかもしれません。思ってそう。

2025年1月30日木曜日

神に愛されなかった者の生き方は?「天使の跳躍」を読んだよ

藤井聡太七冠が登場して変わった事、色々あると思いますが
一般人目線で変わったな、と思っているのは、
将棋系創作物のラスボスが藤井七冠準拠になったな。
という事です。

それまでのラスボスは言わずもがな羽生九段準拠、つまり主人公より上の年代だったわけですが
ここ数年は変わって、超えるべき存在が主人公と同年代または年下になった。
これは結構大きな変化ではないでしょうか。

ラスボスが年上であれば、若き主人公の経歴や実力が及ばないのも致し方なく、背中を追いかける存在として見上げていられたわけですが
同じ年齢で活躍しまくる大スターが居る場合、スターを横目に、”神に愛されなかった者”はどう生きれば良いのか、という話になるわけで。
藤井七冠以上に経歴を盛れないのであれば主人公は負け確。
その状態から一体どこに、どのようなゴールを設定すべきなのか?

そのテーマに対して「百折不撓」という答えを用意できるのは、中年ならではの強みなのかもしれません。

「天使の跳躍」の主人公一義は、その百折不撓の棋士、木村一基九段がモデル。
46歳までタイトルに挑戦するも獲得まで及ばず、もうダメかと思っていたところに再びタイトル挑戦の機会が到来。
対戦相手は八冠を独占する将棋界のスーパースター源大河…こちらも誰がモデルなのかは一目瞭然。

おそらく棋聖戦がモデルと思われる「聖王戦」五番勝負を戦う中
一義がこれまで辿った人生、変わっていこうとする人々のドラマが錯綜し、人生をぶつけて戦っていく様が描かれております。
人生の紆余曲折、出会った人の数などは、若きスターより勝っているのは確か。

一方で、令和の王者の人生は全く描かれず、何を考えているのかも不明で
3章後半になるまでセリフらしいセリフすら無く、徹底的に人間味を削られております。
その理由は最後に明かされるのですが…将棋的なものが得意で…このオチ…どこかで…

主人公以外にも実在の棋士をモデルとした登場人物が非常に多く、棋士を知っていれば思わずニヤリとするようなエピソードが並びます。
特に深浦九段がモデルとなっている地守九段…名前も狙ってるよね絶対、という地守九段のセリフ回しがまさに深浦九段の喋り方そのまんまで、深浦九段の声で再生されるくらいには激似。

あまりに似すぎているためか、もう少しオリジナリティがあっても良かったんじゃないかな…と思ってしまうかも。
特にタイトル戦終了後のセリフがそのまんま借用なのが気になりましたが、そのまま使いたかったんだうなとも思うし、いやしかしプロの小説家がこんな大事な場面で人の言葉をそのまま使うのか…リスペクトなんだろうけど…いやまて、実際に言葉を発した棋士ではなく源大河のセリフにしちゃうのはリスペクトなのか…?などの葛藤が私の中で生じました。

全体的に感情的で展開は熱く、ストーリーは面白いんですが
創作小説を読んでいるというより、現実のパロディ小説を読んでいる感覚が増してきてしまいますかね。

2025年1月16日木曜日

羽生世代と天才との戦い「いまだ成らず」を読む

将棋関連のドキュメンタリーはドラマチックに描写される事が多い印象です。
そうじゃないものは棋譜に言及している事が多いので、私のような棋力ゼロ観る将が見て「面白い」と思えるものは、ドキュメンタリー形式のものになるのですが。


「いまだ成らず」は、羽生善治九段に関するなんともドラマチックなドキュメンタリー小説です。
対局の描写で「森内はこう思った…」などと書かれていると、類似の発言があったのだろうけど、ちょっと盛ってる気がする。
と、読んでいる私がそう思ってしまうくらいドラマチックに描写されています。
でもこれが面白いんですよね、小説を読んでいるみたいで。

特徴的なのは、羽生九段本人の視点ではなく羽生九段を取り巻く周囲の目線で物語が進んでいくところでしょうか。
羽生九段自身がどう考えていたのかは描写されず、周囲が羽生九段を畏れる描写のみとなっているので、神格化が捗っております。
さがならドキュメンタリー版「白夜行」ですね。
主な登場人物は、豊島九段、斎藤八段、谷川九段、森内九段、佐藤康光九段、先崎九段、深浦九段、渡辺九段
そして記者や奨励会員など。

各章のはじめに、2022年第77期王将戦 藤井聡太王将vs羽生善治九段戦を追いかける文面が入り、そこから各棋士の掘り下げと羽生九段との思い出のエピソードが入る組み立てになっております。

個人的には、佐藤康光九段が「緻密流」「正統派」と言われる一方で「丸太」と、緻密とは思えない評価を得ているのが謎だったのですが、それがこの本で氷解しました。
昔は緻密だったのが、羽生九段に対抗するすべを模索するうちに丸太をぶん回すようになったと…
な、なるほど…

深浦九段もタイトル戦で意表の手をついて批判されるなどのエピソードがあり
レジェンド羽生九段と戦うために同世代の棋士たちがいかに苦戦してきたかが存分に語られております。
こういう本、好き。

符号は時々登場するものの棋譜に関する話は無く、観る将でも楽しく読める小説風ドキュメンタリーでした。

2024年11月12日火曜日

スパイスカレー本が無料配布されるですって?

電子書籍限定で、「日本生まれのインド人、メタ・バラッツのスパイスカレーユニバース」が無料配布されたと聞き、さっそく入手いたしました。


メタ・バラッツ氏は一体何者なのかというと、鎌倉にあるスパイス屋さんの店長で、ネットでは「インターネットオブスパイス」というコンテンツでスパイス販売とレシピ公開を行っているかたです。

インターネットオブスパイス、私もお世話になっております。
本場インドの料理…というより、日本の食材を使って季節に合ったスパイスレシピを編み出している系統なので、私はてっきり日本人がレシピを作っているのかと思っておりました。

そんなレシピ本を無料で…ええ…良いんですか……
Webで公開しているレシピをまとめただけなのかな?なんて思っていたのですが、それだって本にするのは大変じゃないですか
ものすごい大盤振る舞い。本を読んでスパイスを買おう。

おそらく表紙の416が掲載レシピ数。
一応、肉カレー・魚カレー・豆と野菜カレー・ライス・アチャールや副菜系・ドリンク・その他にカテゴライズされておりますが
レシピ数がとにかく多いので、サブカテゴリ欲しい。あるいは何かルールがあれば…と思ってしまいます。こんな嬉しすぎる悲鳴があるとは。

なお、一部レシピには手順内に「ホールスパイスをローストしてミルサーにかける」工程が含まれております。
この間買ってきたスパイスマッシャーでなんとかなりませんか…

この本を見て、カレーって自由なんだなと思いました。
料理全般が自由なんだと思います。たくさんの食材にたくさんの味付け、どう組み合わせるかは自分次第。
一方で、その無限の組み合わせにも当たり外れがあるわけで
私程度のスキルでは自由過ぎて何やっていいのか分からない、全く説明のないオープンワールドゲーム状態になるので
先人が作った道を歩けるのはありがたいものだという気持ちでこのレシピ本を眺めております。

2022年6月16日木曜日

異世界の歩き方

前も書きましたが今年はダロワイヨ様からチョコミントケーキが出ないんですよ。私のような負け犬ぼっち女には、誕生月にチョコミントケーキを食べるくらいしか楽しみが無いというのに。悲しい、ああ悲しい。
まぁーでも無いものはしょうがないのと
今年はちょっと別の欲しいものがありまして
買ってしまいましたよ、誕生日プレゼントとして

地球の歩き方 月刊ムーコラボ本!



世界の料理を収めた「地球のかじり方」という本も気になったのですが
サンプルを見る限り「作りやすい分量(6人分)」とかになっていたり、材料がかなり本格的なので
これは作るの無理だなと思いましたので見送りです。
196カ国レシピ本がすでにありますしね。

まだ読破はできていませんが、ムーよりもかなり穏やかな内容になっていて
遺跡や建築物に対して、成り立ちや歴史などが解説されているので
遺跡好きにはわりとたまらない内容になっているのではないかと。
時々ムー知識が挟まっているのでそこはお好みですが。
あとやっぱり世界中がターゲットなので、広く浅くの紹介ではありますね。
個人的には十分楽しいです。

2022年4月6日水曜日

小説火の鳥 大地編を読んだよ

手塚治虫が構想のみを残した火の鳥 大地編。
いつの間にか小説になっていたようなので、読ませていただきました。

著者の桜庭一樹さんはお名前は存じ上げているのですが作品を1つも読んだことがなくて
なので他の桜庭作品と比べてどうなのかと言う比較はできないものの、
おそらく、相当、手塚作品っぽさ意識されたのではないでしょうか。
登場する人物が実に手塚キャラしてるんですよね。

しかしそれゆえに、小説としてはなんていうか……
世界をデフォルメした手塚ワールドをそのまま文字にしたような感じになっていて、ちょっと恥ずかしさみたいなものを感じてしまいますね。
特に川島芳子さんじゅういっさい(物語開始時)の1人称が「おいら」で言動がどろろっぽいところとか…
脳内の悪巧みを全て言葉にして「アーッハッハ」と高笑いをつけないと気がすまない間久部緑郎くんとか…これが1番小説を生かしていない気がする。
原案から一度手塚マンガに変換し、そのマンガを文字起こししたような印象を受けました。
もっと浦沢直樹の「PLUTO」くらい独自の世界でもよかったんじゃないかと思ったり。

内容は、大体19世紀後半から20世紀半ばを舞台としたループもので、日露戦争や第二次世界大戦が背景になっています。
われわれは歴史として結末を知っているので、どうやってその結末に至るのかを描く物語となっております。
ループの仕組み関連で気になる点はあるものの、個人的には楽しく読めました。

だが毒がない。非常にきれいな火の鳥ですね。
火の鳥さん自体もずいぶんおとなしいですし。
登場人物の目の前にチャンスを転がし、調子に乗らせるだけ乗らせた後、すべてを奪って「人間愚かwww(意訳)」で煽り散らかして飛んでいくのが火の鳥さんだと思っているので
今作は、とてつもなく優しいですね。
本家なら三田村は逆鱗に触れて黒こげになってると思いますよ。
著者の他の作品が気になるレベルの心優しさです。基本的にハッピーエンドで終わるのが好きなタイプなのかしら?と思ったり。

2020年12月8日火曜日

「薬屋のひとりごと」を読んだよ

Kindle Unlimitedで9巻無料という大盤振る舞いだったので、読んでしまいました。
9冊もあれば完結しているだろうと思って読み始めてしまいましたが、「物語はいよいよ佳境に!」という感じのところで止まっており、地団駄を踏んでいます。


「薬屋のひとりごと」は、中世中国に似た架空の国
そこの後宮で毒見役を務める薬師の猫猫と、後宮を取りまとめている壬氏とのやり取りがメインの……
ミステリー?いやラブコメ?
毒や薬の知識にへぇと頷きつつ、恋愛事に全く興味のない猫猫と、口に出さないけれど猫猫に思いを寄せる壬氏がすれ違いコントのようなやり取りでイチャコラする様子は
「狼と香辛料」をどことなく髣髴とさせる感じが…
細かく見ると色々違うけれど、なんとなく似た雰囲気がある気がします。

1冊の中で複数の事件が起こり、一見つながりはなさそうに見えるものの
最終的にそれらが結びついて大きな話になる構成なので
アニメ化に向いているんじゃないかしら、アニメ化したら面白そう。

この歳になってくると、アニメやゲームに登場するキャラクターの設定があからさま過ぎて辛いということがあるのですが
「薬屋のひとりごと」は、変態軍師以外は大体落ち着いていて、個性を出すのに「盛ってる」と感じることが無くて良かったですね。
挿絵が入っているためか、読んでいると猫猫が暮らしている高給や花街、工房などの風景が浮かんでくる感じで、繰り返すけどアニメ化に向いてるんじゃないかという気が。
というか、私がアニメでこの話を見たい。

ガラスの仮面や十二国記の新作を待ち続けているので、
続き物はあまり見ないようにしているんですが
またしても続きが気になる作品ができてしまった…はやく…はやく10巻を!

2020年10月1日木曜日

「守り人」シリーズ読破とタンダ解釈違いの話

途中よみかけで放置していた「守り人」シリーズを読破いたしました。
1作目「精霊の守り人」だけでも十分な大作だったのですが
その舞台を「新」ヨゴ皇国にした時点でもう最後の話までできてたんだなと思うと凄まじいものがありますね。

ところで小説を読む時って、キャラクターがどういう見た目なのか想像されますか?
私はしたりしなかったりですが
「精霊の守り人」はアニメ化もされているので、脳内ではアニメ版バルサに変換されて場面が再生されたりしております。

精霊の守り人シリーズは、ハードカバーを偕成社、文庫本が新潮社から出ておりまして
イラストレーターが違うんですよね。
基本的にアニメのキャラクター、および後発の新潮社版カバーイラストも、おおよそ偕成社版を元に作成されているっぽいのですが
タンダとジンがだいぶ改変されてるようでしたね。
偕成社版のタンダは…なんともいい難い特徴の無い素朴な顔と団子っ鼻&天パ。
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これが新潮社版になると、ちょっとしたキロランケのような顔立ちになり、服装からしてもアイヌ意識なんだろうなという感じに変わっております。
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おそらく右下がタンダ。

アニメ版は色黒でお団子ヘア
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私はこっちのタンダを見慣れているので、君たちは誰だ?と首を傾げまくりです。

一方で、獣の奏者がアニメ化したときは、かなり簡素化されたテイストにも関わらず全然違和感無かったので
アニメとして絵が動くというのはインパクト大きいんだなとしみじみ思いました。

来年は鹿の王が映像化されるわけですが
こちらは公式サイトにキャラクターイラストがばっちり載っているので
マコウカンがイケメナイズされる以外はイメージどおりなのかしら。
今から楽しみですわ。

2020年9月29日火曜日

片付けられない女のための今度こそ片付ける技術を読む

どうも掃除のできない人間です。
Prime Readingに入っていて、読みやすそうだったので、読んでしまいました。
漫画形式なので15分もあれば読めます。
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この本もそうなのですが、一般的に「片付けられない」というと、モノに溢れて足の踏み場もない、って感じになるんですかね?
前にもゴミ屋敷の危機なのではとちょっと書いたこともありますが
我が家はそこまで物、多くないんですよね。
物っていうのは、金が無いと買えないですからね。
この本の筆者も、収納用の棚に30万以上使ったと書かれていて
世の中の人ってお金持ってるんだなぁって、しみじみ思いました。
もしかして氷河期の世代だけ特に貧乏で、他の世代は倍くらい給料もらってたりするのでは…

それじゃあ物も無いのに汚いとは何事か?というと
私の場合、床には無いけど机の上は積み上がっております。今見てみたら、製菓材料とか、砂糖、塩、小麦粉、キッチンスケールとか…毎日使うからしまうのめんど…
あと調味料類は買いすぎてしまえる場所がないかもしれない。
そして何よりも掃除ですよ。
片付けではなく、拭き掃除、掃き掃除。
ちょっと油断するとすぐ玉ねぎの皮が床に落ちるし
油断しなくても髪の毛バンバン抜け落ちてるし、
こんなに髪の毛が抜けたら将来ハゲてしまうと涙を流しながら掃除しても掃除してもまだ落ちる髪の毛。
五徳もキッチンもすぐ油汚れやフライパンからログアウトした食材の欠片が散るし
シンクは黒くなるし、
外から土埃でも入ってきてます?ってくらい窓枠に土埃みたいなのが溜まるし
巾木の掃除なんか面倒くさくてもう無理。

そういう意味では、この本はモノにあふれるものの片付けの方法は丁寧に書いてたけど
お掃除については苦戦している様子もなく
キッチンの油汚れが重曹だけですっきり落ちてたりするのを見て
我が家との違いにがっかりしたりするのでした。
うちの油汚れそんなにすぐ落ちないよ。
196カ国レシピを動画で撮影しようかと思ったこともありましたが
五徳が汚いせいで断念ですからね。
きれいなキッチンほしいわぁ。

などと言っても、この本を読んで、とりあえず机の上にあるものをいくつか捨てて見ました。
例えばこれ、前の会社でたぶん誰かからもらった可愛いひよこのノート……あれこんなに汚れてた?って思うのね、ずっと机のかたすみにあって見もしなかったから、水とかこぼしてたんでしょうね。
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こういう本、いいきっかけになるので、また汚れ始めたら読もう…汚さないのが一番だけど。

2020年8月17日月曜日

将棋界にプロ編入制度を作った一人のアマチュアがいた「泣き虫しょったんの奇跡」

リアルタイムでアニメ遊戯王の2作目を見ていた時は、あまりピンとこなくて途中で挫折したんですが
それから数年後、再放送で改めてGXを見た時に「何だこの面白い話は!」と驚きましてね。
デュエルは勝負であり、勝者と敗者、強者と弱者が生まれるわけですが
登場キャラクターがそれぞれに身を置きながらデュエルと自分との関わり方、デュエルを通して自分の存在を確かにしていく話でして
ジュブナイルですよね。遊戯王GXってジュブナイルだったのかと。

この本を読みながらそんなことを思い出しました。
泣き虫しょったんの奇跡
泣き虫しょったんの奇跡 完全版 サラリーマンから将棋のプロへ (講談社文庫) - 瀬川晶司

将棋の本なのでデュエルに例えるのは物議を醸しそうですが
将棋が楽しい、将棋大好きだった少年が、奨励会に入って、指したい手ではなく勝つための将棋を指すようになり、再び「指したい手を指す」という心境に至るところとか
純粋にデュエル大好き少年だった十代が、紆余曲折を経て最後にやっぱり「楽しいデュエルだった」と言うのとものすごく被って見えるんですよね。

こんな少年漫画のような展開があるのかと、一気に読み切ってしまいました。
映画化待ったなしと思ったらやっぱり映画化もされていたようです。

泣き虫しょったんの奇跡は、26歳の年齢制限で奨励会を退会となった著者が、アマチュア将棋で活躍し、対プロ戦で好成績をおさめたことから
将棋連盟にプロ編入の嘆願書を送り
61年ぶり、戦後としては初のアマチュアからプロ棋士となった瀬川晶司六段の物語です。

小学生の時、瀬川氏は恩師と出会うのですが
恩師も瀬川氏と同じく、一度は教師の夢を諦めたものの、諦めきれずに35歳で教師の夢を叶えた先生。
それまで自分らしさを持てなかった瀬川氏が、恩師に褒められることで自分を見つける話は感動ひとしおです。
1章から泣かせに来ている。

アマチュア大会で優勝して、奨励会に入会。
そこで「勝つための指し方」があることを知り、勝つために将棋を指すようになってゆきます。
が、年齢制限の壁も見えてきて逆にどんどん勝てなくなっていき、
奨励会を退会し、将棋から離れるものの、
やっぱり将棋からは離れられずにアマチュア大会に出て、改めて将棋が好きで、指したい手を指すために将棋をやっているのだと感じる流れがもう完全に少年漫画の世界です。

プロ編入は瀬川氏だけの特例ではなく、瀬川氏の行動は将棋界に「プロ編入制度」自体を生み出しました。
それでもやっぱり瀬川氏は勝者側の人で、
作中、「プロ間違いなし」と称された才能がちらっと登場するのですが
その才能は三段リーグを抜けることができず、制度ができた後のプロ編入試験も越えられておりません。
そしてそういう才能が本になることは滅多に無いわけで…
諦めなければ、夢は叶う。という言葉は
叶えた人しか言えないのだと改めて思いますね。
人生ってしんどい。
それでもこの手の話はどうしても惹かれてしまいますよね。


2020年5月26日火曜日

オリンピア・キュクロス衝動買い

たまたま開いたAmazonで、オリンピア・キュクロスのアニメ…のような何かを見てしまいまして
うっかり漫画も買ってしまいました。
正直、映像を見る限り原作欲しいとは思わなかったんですけど
1話試し読みしたらやっぱりめちゃくちゃ面白くてですね、つい。
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私は東京オリンピック非歓迎、もといスポーツイベントには良いイメージがなく
オリンピア・キュクロスを見たときには、ついに東京オリンピックのステマもここまで来たかとがっかりした気持ちになったんですけど
いざ読んでみると思ってたのの真逆、むしろ現代オリンピックの批判も含めた作品でした。


テルマエ・ロマエと比較すると、ルシウスがひたすら風呂を追求していた前作に対し、今作では人が表現することがテーマになっているような流れ。
主人公のデメトリオスは壺絵師で、絵を書くことが大好きなのに絵が下手。
一方で運動神経が抜群に良く、
自分に合っているオリンピック選手の道か、
自分が好きな絵の道か、
どちらを歩けばいいかを迷っている感じ。

デメトリオスの村の村長は、村の権威を上げることに執心していて
描きたい絵ではなく売れる絵を描け、
オリンピックも、名をあげるために出場しろ、と言うばかり
絵画も運動も、自分を表現するためのもので、権威やお金のためのものではないはずなのに…と、葛藤するデメトリオス。

……って、
作者のヤマザキマリさんて、生活のために漫画描き始めたかたではなかったかしら?
絵も音楽もなんでも、お金や権威や名誉のため「だけ」にやるのは本質を損なうけれど
お金がないとやっていけないという側面もあり
いつか作者のその手の話が入るのではないかと、今から心待ちにしております。

あと前作と比較すると、
言葉の壁とか文化の壁に驚くくだりはわりとカットされていて
現代から古代アテネにタイムスリップしてきた人も「実はギリシャ語喋れるんです」という設定が突然出てくるとか
タイムスリップも実に都合のいいタイミングだったり
多少都合のいい展開になっています。
ただ、そこを丁寧にやり始めるとテルマエ・ロマエと重複するし、この物語がやりたいのはそこじゃないと思うので
これでいいのかなと、慣れてくるとむしろ楽しい。

しかしこれ、2020東京オリンピックがコロナで延期されてしまったので、果たして今後どうなるのかなと。
私にも東京オリンピックを楽しみにする理由ができてしまいました。
というか、東京オリンピックのあとに描かれるオリンピア・キュクロスが楽しみ。
『オリンピア・キュクロス』スペシャルムービー

2020年3月25日水曜日

システム障害はなぜ起きたか

みずほ三度目の正直を読む前に、原点に戻ってみました。
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最初のシステム障害発生から間もない時期に出た本です。
以前読んだ時はまだ意識が高い時期だったので
「この失敗を私の糧に」とかなんとか思いながら読み
「無理ゲーだ」という感想で締めくくった記憶があるのですが

2回読んでも個人がどうこうできる問題では無さそうなんですよね。
でも2回目で新たな気づきも得ました。
この本ですら派閥問題から逃げられていないのだという事に。


みずほ銀行第1回システムトラブルの原因を…まあ色々あるけれど
①ITに無関心な経営陣が現場に丸投げした
②SIerとなるべきベンダーが自社製品の売り込みに終始した
の大きく2点が挙げられております。

銀行統合によりさくら銀行、東京銀行を失い、第一勧銀を失うととピンチになる富士通。
内々で、勘定系は富士通で行く話が出たものの
経営陣は明確に決定せず下に丸投げしたので、
「富士銀行と第一勧銀のシステム機能比較の会」が延々と開かれ、
4千万円かけて「有意な差なし」との結論を出す始末。

この機能比較は富士銀と興銀に溝を残し、
これ以降も本には、おそらく想像と思われるけれど銀行同士の縄張り争い

改めて読むと、この本はわりと興銀を悪者として書いているなという印象が。
それが正しいのかどうかはわからないけれど、
情報提供者が富士銀行関係者だったんだろうな。っていうのは想像できます。

また対比として、合併に成功した北洋銀行、東京三菱銀行(当時)のエピソードが掲載されています。
ただこの2行は、特殊銀行だったり、口座数の問題上
片方のシステムを選ぶことがどう考えても合理的だったので
比較するのは少し可哀想というか、
むしろなんでみずほは統合しようと思ったの?と聞きたくなるというか。

当時のあれこれを思い出して懐かしくなる1冊でした。
18年前かぁ。(遠い目)


2020年2月25日火曜日

シャーロック・ホームズ女性化小説を読む

シャーロック・ホームズを現代版にして、さらに登場人物を男女逆転させた本
「シャーリー・ホームズと緋色の憂鬱」
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突然ですが、私はゲーマーではありますが、いわゆる乙女ゲーって好きじゃないんですよ。
一体何がそんなに気に入らないのか、以前考えたことがあるんですが
主人公と考え方が合わず、著しい違和感を感じるのだという結論に至りました。
何事にも一生懸命で、まっすぐで、元気で、ちょっとドジな可愛い子で、恋愛脳な奴。

ねーわ、ねーわ。

ちなみにこれの少年主人公版、
熱血で、元気で、バカで、筋力と根性だけで生きてて議論が煮詰まってくると「あーうっせー」とか言いながら考えなしに行動したら主人公補正で成功しちゃうような奴も同じくらい嫌いでして、

要するにこういうテンプレ臭を感じるものに辟易するんですよね。


プロローグを見て、ワトソンがめちゃくちゃテンプレ女子っぽく感じたので吐き気をもよおしかけたのですが
突然死体安置所で眠りだしたところで評価が変わりました。
しかもそこでちょうどホームズ登場。

このホームズさんは、何でもできるスーパー美女お嬢様なんですが
ホームズが出てくると個性の薄いワトソンが良い感じにはまってきて、
わりとポジティブな性格ながら、時々アフガン戦地の生々しい話がさらっと入ってきたりして
テンプレチャラ女との認識から、鋼メンタル女に変わっていき、曲者ぞろいの中に輝く凡人として愛着もわいてきます。


ストーリーはやや荒唐無稽なんですが
私はこういう、「こまけーこたーいいんだよ」と勢いよく乗り切るタイプの話は結構好きでして

全体的にラノベみたいな軽さを感じるものの
設定を活用するのが上手い作家さんだなと思いまして
不要な設定があんまり無いんですよね。

ワトソンが冒頭から生理になってるのも、ホームズの心臓が悪いのも
そう来るか。という方向で活用してくる。
さらにはモリアーティとホームズに明確な接点があって
それが最後の最後で明かされるんですが
その最後が一番楽しかったまである。
これは続編が見たいやつ。

なお、ホームズとモリアーティについては「女優の〇〇に似ている」と言及することで、イメージしている女優さんが登場しますが
モリアーティはメリル・ストリープだそうです。

わかる!!!!!!
これは続編も読む、決定。

2020年2月7日金曜日

呪いの言葉の解きかた

勤め先企業のブラックさを嘆くと「嫌なら辞めればいい」
と言われる様子を時々目にします。
問題は、ブラックと呼ばれる体質とか、それを強いる経営者のほうにあるのに、
それに対しての抗議を「文句」と表現し、嫌なら辞めろと言う。

こういった、相手が設定した思考の枠組みにはまる言葉を「呪いの言葉」と定義したのがこちらの本。
呪いの言葉の解きかた - 充子, 上西

「解きかた」とありますが、ノウハウというより
労働、政治、ジェンダーなど、様々な局面でよく見かける実際の呪いの言葉事例集のような感じです。

この本の始まりはTwitterらしく、
今でもTwitterで#呪いの言葉の解き方 を検索すると、色々なツイートが検索できるのですが
そこはやはり玉石混合というか、広告や荒らしのようなゴミまで混じっているので
まとめたものを読みたい場合は本のほうがやっぱりいいですかね。


相手の土俵で戦ってはいけないのは当然なのですが
日常だとつい忘れてしまいがち。
さくっと読める本なので、時々でもパラパラと見返すと
そういえば最近…みたいなことに気付けるのかもしれない。

2019年12月10日火曜日

鹿の王 水底の橋

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「鹿の王」の外伝というか後日譚というか。
主人公の一人ホッサルを巡る話になります。
鹿の王を読んだのも結構前で、男やもめ中年で監獄スタートのヴァンと比べて、ホッサルは若くてイケメンエリートな印象があったんですが
改めて読んでみるとアラサーで口が悪くて「俺いい男」(意訳)と言ってしまうキャラで、義姉が好きなのに恋人もいて
あれこんな人だっけ?
と、記憶を呼び戻すのが大変でした。
口は悪かったような気がする。

「水底の橋」にはふたつの医術が登場します。
医術でありつつ宗教でもある清心教と、
優れた医術をもっていながら被征服者となり立場が悪いオタワル医術。

オタワル医術はある事件をきっかけに王侯貴族から一目置かれるようになるのですが、それが面白くないのが清心教。
これだけ書くと清心教は非常に悪者じみてるんですが、
国民感情に沿った医療を施しているのもまた清心教のほうで
単にどちらが優れているかという話ではなく、
QOLや家族のケアも含めた大きな話になっています。

一方で、オタワル貴族の末裔として貴族と結婚し子孫を残さなければいけないホッサル。
彼にはミラルという恋人がいるんですが彼女は平民で、身分の違いから結婚は不可能。
別れられずにずるずると関係を続けているホッサルに、ついに決断の時がやってきて…みたいな話にもなってます。

タイトルになっている「水底の橋」は、ミラルの父が話す内容に登場して、
途中、水底の橋ってそういう事か。と大いに頷き、
結末を予想してセンチメンタルな気分に浸ったりするんですが
そう単純な話に終わるでもなく、
予想外の事件が起きて予想外の方向に転がっていきました。


権力争い、医療と人とのかかわり、ホッサルさんの個人的な事情。
この3つが絶妙にまとまっています。
そんなに長い本じゃないんですよ。
なんで1冊に収まっているのか、いまだに不思議です。

あ、そうそう。YA向けの大きな活字、大変読みやすくて良いです。
小さい活字が読めるようになったら大人だなとか思ってましたが
そんな大人の期間は速攻で折り返しになりましたね。
ローガン万歳。

2019年11月19日火曜日

十二国記「白銀の墟 玄の月」読了したのでネタバレ感想

十二国記の新作を読み終わって、とりあえず「魔性の子」からもう一度読み返し始めました。
事前に予習してなかったので、新作読んでる最中、過去作を読みたくて読みたくて仕方なかった…


以下、ネタバレありなのでご注意ください
白銀の墟 玄の月 第一巻 十二国記 (新潮文庫)


泰麒がひたすらかっこよかった……
泰麒が十二国に居たのはたった1年で、蓬莱では学生ですから、
国家運営のなんたるかを蓬莱で学ぶ機会は無かったと思うんですが、何十年、あるいは何百年と王宮で仙をやってきた人達に対して理を説けるという明晰っぷり。

おまけに計略を駆使して朝廷を牛耳っていくし、
意思の力でいろいろねじ伏せるし、殺生を嫌うはずなのに人を刺していくし。
麒麟の大前提が覆されたと言っても過言ではない。


一方で、煮え切らなさも残る話だったと思いました。
明言されていない謎がいくつか残ってしまっていたので。
特に琅燦。
阿選が言うには彼女こそ簒奪をそそのかした人物である一方で、玄管として民を助けてもいたらしく、
最終的には「敵ではない」と言われるものの、戴の悲劇を引き起こした張本人の一人であるわけで
こいつは何がしたかったんだ?と大いに疑問です。

あと妖魔のせいでどれだけの人が廃人になったかを思うと
心情的に受け入れがたいので、納得させてほしいという気持ちがどうしても。
恵棟を返してくれ。


あと終盤に向かうにつれて、残りのページ数が少なすぎてハラハラしました。
削って削って4冊になったとインタビューでは仰ってましたが
終盤もう少し手厚くしていただけたら…
項梁がすっかりフェードアウトしていたし、
肝心の驍宗vs阿選の決着が本編にないのも少し残念だったし…
こっちは「月の影 影の海」でも景麒を助けるところで終わっているので伝統なのかもしれない。
会ったら二人はどういう話をしたんでしょうね。
でも多分驍宗が直接阿選を討つ機会は無かったんだろうな。


この4冊分の物語が歴史書数行にまとめられているところもシリーズ伝統ですが、
極端に俯瞰されることで、十二国の歴史のほんの一部に過ぎないことが強調される気がします。
十二国記で後日譚が書かれることはあまり多くないのですが
その後、気になりますよ。
100年…せめて10年後くらいの慶や戴を見たいです。

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