2025年1月16日木曜日

羽生世代と天才との戦い「いまだ成らず」を読む

将棋関連のドキュメンタリーはドラマチックに描写される事が多い印象です。
そうじゃないものは棋譜に言及している事が多いので、私のような棋力ゼロ観る将が見て「面白い」と思えるものは、ドキュメンタリー形式のものになるのですが。


「いまだ成らず」は、羽生善治九段に関するなんともドラマチックなドキュメンタリー小説です。
対局の描写で「森内はこう思った…」などと書かれていると、類似の発言があったのだろうけど、ちょっと盛ってる気がする。
と、読んでいる私がそう思ってしまうくらいドラマチックに描写されています。
でもこれが面白いんですよね、小説を読んでいるみたいで。

特徴的なのは、羽生九段本人の視点ではなく羽生九段を取り巻く周囲の目線で物語が進んでいくところでしょうか。
羽生九段自身がどう考えていたのかは描写されず、周囲が羽生九段を畏れる描写のみとなっているので、神格化が捗っております。
さがならドキュメンタリー版「白夜行」ですね。
主な登場人物は、豊島九段、斎藤八段、谷川九段、森内九段、佐藤康光九段、先崎九段、深浦九段、渡辺九段
そして記者や奨励会員など。

各章のはじめに、2022年第77期王将戦 藤井聡太王将vs羽生善治九段戦を追いかける文面が入り、そこから各棋士の掘り下げと羽生九段との思い出のエピソードが入る組み立てになっております。

個人的には、佐藤康光九段が「緻密流」「正統派」と言われる一方で「丸太」と、緻密とは思えない評価を得ているのが謎だったのですが、それがこの本で氷解しました。
昔は緻密だったのが、羽生九段に対抗するすべを模索するうちに丸太をぶん回すようになったと…
な、なるほど…

深浦九段もタイトル戦で意表の手をついて批判されるなどのエピソードがあり
レジェンド羽生九段と戦うために同世代の棋士たちがいかに苦戦してきたかが存分に語られております。
こういう本、好き。

符号は時々登場するものの棋譜に関する話は無く、観る将でも楽しく読める小説風ドキュメンタリーでした。

0 件のコメント:

良ければクリックお願いします

にほんブログ村 その他日記ブログ ひとりぼっち日記へにほんブログ村 ライフスタイルブログ おひとりさまへ