2025年11月27日木曜日

おじさんが対人関係で苦労しながら喫茶店に通って美味しいもの食べるだけ『喫茶おじさん』

タイトルとポップな表紙に惹かれて読んだ本。
喫茶店版『孤独のグルメ』かとおもいきや、グルメレポートの裏に57歳無職の人生の苦労がひしひしと書かれていてちょっとつらくなるのがこちらの本
『喫茶店おじさん』でした。


主人公ぼ松尾純一郎は57歳、無職、離婚の危機。
家の近所の喫茶店で浅い知識をひけらかし、それに対して気分を害した店員に陰口を叩かれたことをきっかけに、喫茶店巡りを趣味にする。
それから1年間、純一郎を取り巻く様々な人と会いながら話は進んでいくのですが
会う人に必ずこう言われるんです。「あなたは何もわかっていない。」と。

一体何が「わかっていない」と言うのか、気がつく人はすぐ気がつくのかもしれませんが、私はしばらく何を言われているのか分かりませんでした。
書評では、純一郎にいらっとする、との意見があるようですが、私はこのおじさん、めちゃくちゃ性格良いなと思いました。
「何もわかっていない」って、他人にかける言葉としては、かなりきつい悪口の部類だと思うんですが、純一郎はそう言われても怒らないんですよね。
言われてモヤモヤとした気持ちを抱えることがあっても、喫茶店巡りでおいしいコーヒーやパン、スイーツなどを食べて流して、後に引きずらない。
誰かに当たるでもなく、いつまでもくよくよしているわけでもなく、非常にメンタルが安定しているように見受けられます。

半分くらい読んだところでようやく、何がわかっていなかったのか、1人の口から語られるのですが、トータルで「俺の私の苦労を純一郎は理解しない」という指摘なんじゃないかと思うわけですよ。
まあ純一郎、57歳無職離婚の危機と書いたものの、元々一部上場企業に勤めていたイケメンで早期退職で5000万円ももらい、埼玉に土地付き家有り、お金と健康を気にせず喫茶店はしご三昧なので確かに恵まれてはいるんですが。
それでも純一郎に「何もわかっていない」と言葉をぶつけた人たちは、純一郎のことを何かわかっていたのだろうか?という怒りが、私は湧いてくるわけですよ。
特に純一郎の妻に対して。アンタがそれを言うのはおかしくない?と思うんですけどね。

この本に登場する人の誰が最も良い人生なのか、そこは議論の余地があるところだと思います。
でもそこに議論の余地があるってことは、良い人生って答えが一つとは限らないから。
完璧な人生を送っている人は居ない。誰しも何か問題があり、不満があるのに
純一郎だけが「わかってない」をぶつけられるのは結構理不尽に感じますし
そう言われ続けてもなお、「誰も自分の事をわかってくれない」と腐るのではなく喫茶店で美味しいものを食べて幸せを噛み締める純一郎はやはり性格が良いなと思うわけですよ。

かつて「悩みなんてないんでしょう?」と言われた事を思い出しますね。
この文章の中に、お前の人生は楽、という決めつけ、それに比べてこっちの人生は大変、という不幸自慢、それでもやりくりしてるんだぜというタフ自慢、こっちの事情を考えようともしない共感性の低さなど諸々が詰まってるんですよね。
「あなたは何もわかっていない」も、とても似た言葉だなぁと思うわけです。

物語のラストは賛否ありそうな終わり方ですが
どちらかというと私も純一郎のような老後を過ごしたい気がするので、個人的には良かったねと思いますね。

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