2020年5月11日月曜日

スウェーデン版カールじいさん「幸せなひとりぼっち」感想

幸せなひとりぼっち(字幕版) - ロルフ・ラスゴード, バハー・パール, フィリップ・ベリ, ハンネス・ホルム, アニカ・バランダー
見たきっかけはたまたまなんですけどね。
妻に先立たれた偏屈なじいさんが社会性を取り戻していく…という、カールじいさんを彷彿とさせる内容。
邦題に「ひとりぼっち」って付いてるけど、まず全然ぼっちじゃないのねこのじいさん。じいさんといっても年齢59歳だし、ちょっとじいさんと呼ぶには微妙なラインよね。

物語の開始時点でリストラされ、町内会の自治厨で多方面に怒鳴り散らし「変人」と呼ばれ、孤独そうに見えてるけど
ご近所さんから気にかけて貰ってるのね、ランチに誘って貰ったりとか。
それでも妻を追うために自殺しようとしたところ、隣に騒々しい一家が引っ越してきて
この一家がじいさんにめちゃくちゃ頼み事をする。
ハシゴ貸して、病院まで連れてって、子供の面倒見て、車の運転教えて……
一家以外もじいさんに頼み事をする。
取材させて、一晩泊めて…
で、じいさんもコミュ障なだけで良い人なので、大体押されると引き受けちゃう。

あと今は仲違いしてるけど親友と、最愛の妻がいたんですよ。
ひとりぼっち。とは。
任された子供に「このじいさん嫌だ」とか泣かれたことがあるのか?ぼっち舐めてるのか?
と思わないでもないけど、原題は「オーヴェという男」みたいな感じのものなので、ぼっちは邦題にしか登場しない。
主題はこの偏屈じいさん=オーヴェの人生を振り返る話。

カールじいさんを見たことがあるならわりと予想通りの展開ではあるんですが
それでもオーヴェと父、オーヴェと妻との丁寧な回想は
涙なくしては見れないものがあります。
特に奥さんのために尽力するオーヴェの姿には心を打たれる。

なんでこんな他人のために一生懸命になれるオーヴェが偏屈で孤独なじいさん扱いなの?
と、進むほど理不尽に思うわけですよ。
でも冒頭にも書いたけど、そういえばぼっちじゃなくて、ご近所さんからはちゃんと気にかけて貰っていたっけ。
つまりオーヴェをよく知らない時には偏屈なじいさんに見える。でもあらすじが言うほど孤独ではないような?と首をかしげる。
映画で半生を追ってきたあとは、なるほどこの人にこの人間関係、と納得できる感じでして、非常に演出がうまいですね。

クライマックスではオーヴェが見事脱ぼっちしてハッピー!…とかではなく
映画の最もカタルシスを感じる場面でも、オーヴェ自身が享受したメリットではなく
他人のためにいかにオーヴェが尽力したかがクローズアップされてます。
今までオーヴェは誰かに頼まれて押し付けられるばかりだったのに
初めて誰かに頼み事するんですよね。
でもその頼み事すら、自分のためじゃなくて誰かのためなの
多分オーヴェ自身は「誰かに何かしてやった」なんて思っていなくて
最後の最後まで、他人から認めてもらってないと思っている様子なのね。

ひとりぼっちだと思ってるのオーヴェだけじゃん案件。
ああ、だから「幸せなひとりぼっち」なのね。
見せてやりますよ、本当のひとりぼっちというものを…
…などという比較はおいといて、映画としてはたいへん良作でした。


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